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フェアトレードにおける生産者の「匿名性」への警笛

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News & Columns お知らせ

当社では少量から、フェアトレード及び無農薬栽培された
コーヒー豆を卸売り価格にて販売させていただいております。

焙煎翌日便

杉山世子の【ガチ日記】

2019/06/04

フェアトレードにおける生産者の「匿名性」への警笛

明治大学の授業で取り上げた内容の一部を公開します。

6月某日、わたしは明治大学のゼミの時間にお邪魔し、「チアパス州マヤビニック生産者協同組合とのフェアトレードの実践と課題」といった内容で、授業をさせていただきました。今年で3回目となりましたが、毎年、メキシコの産地から帰国して1発目が明治大学での授業となるため、発表用資料もこのタイミングでアップデートされ、発表者としても、続編を書き終えて、はじめて皆さんに披露する作家のような気分でいます(受講者は、昨年とは違いますが)。

今回取り上げた中で、新しい内容は、「フェアトレードの問題点」という項目の以下のスライドです。

ここでは、私はコーヒー生産者グループを3つにカテゴリー分けしました。

第一グループは、単一農園、多品種栽培をおこなっており、高品質で、市場では高値で取引される生産者が属します。農園規模の大小を問わず、国外輸出向け。

第二グループは、少量生産で国内消費を前提にしている。自らの名前を農園に冠し、栽培から時に焙煎、そしてカフェの運営まで手掛けることもある。

第三グループは、質よりも量を優先。組合や、仲買人へ販売するため、「農家が特定できない」。コーヒーの値段は市場にゆだねられ、収入が少ない。

フェアトレードの生産者(組合)の多くは、どちらかといえば、第三グループから抜け出せない傾向にありますが、マヤビニック組合のように、6次産業化を成功させ、第二グループにまたがって、生産活動を続けるようなところもあります。
第二グループは、エル・サルバドルでいくつか見られたが、個人の裁量で農園管理から販売までを一気通貫に手掛ける「起業家」資質を持っており、リーダーシップや発信力に富んだ人材が属する傾向があるように思います。あとは、若者ですね。若者は、英語を話し、英語で海外の情報を仕入れ、そして海外のバイヤーと積極的にSNSでもつながっていますが、基本的には、高品質コーヒーを国内の自らのコーヒーショップで提供することなどにフォーカスします。余ったら、海外へ送ってもよいけど、そんなにまとまった量にはならないよ、というのが彼らのスタンスです。

さらに、このスライドでは、フェアトレードの問題点として次のようにまとめている。

 

フェアトレードでは、個々の小規模農家がまとまり協働で生産者組合を作ることで、メンバー全員で生産能力を高める取組みをしたり、市場と直接つながり交渉力を身につけ組織を発展させていったり、フェアトレードの利益によって地域社会を発展させていくことができるようになる。

一方で、生産者されたコーヒー豆は、集荷されたときにひとまとめにされるために、個人個人の、コーヒー自体の品質をそれほどまでに追及されることはない。この「匿名性」こそが、組合組織となった際の問題点になり、フェアトレードコーヒーを販売する上での足かせにもなる。つまり・・・


「つまり・・・」にとして続く言葉には、フェアトレードと言え、

1.品質
2.マネージメント
3.マーケティング

といった基本的な要素を無視できず、むしろ、そこに積極的に取り組まなければ、持続的な生産は不可能に近いといえます。例えば、セスマッチ組合のように、農家1軒1軒ごとにサンプルをとり、カッピング評価を行うことで、品質管理をする、というような取り組みを実践できることが望ましいのではないでしょうか(というよりは、当たり前にできてほしい)。
さらに、日本でフェアトレードコーヒーを扱う、我々のような輸入者にも同じことが言える。フェアトレードを行うためには、確かな経済基盤と経営力が必要で、決して「思い」だけではやっていけないというメッセージもしっかりと届けていかなければなりません。

さて、第三グループからいかに上昇するか。それには外部からの働きかけや評価が必要です。そういう意味では、よい品質のコーヒーをつくるのは「生産者」であり「消費者」なのです。

よい品質のコーヒーは継続的に愛される。とはいえ、即効性の高い解決策などなく、結局は、産地に足を通いコミュニケーションを重ねるというフェアトレードのスタイルは、彼らを動機づける唯一無二の方法だと私は感じます。これからも自信をもって、自らが信じる道を進んでいきたいと思います。