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【DAY7】 なぜフェアトレードなのか?

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News & Columns お知らせ

当社では少量から、フェアトレード及び無農薬栽培された
コーヒー豆を卸売り価格にて販売させていただいております。

杉山世子の【メキシコ滞在記】

2014/08/01

【DAY7】 なぜフェアトレードなのか?

豆乃木杉山は7月26日より2か月間メキシコに滞在します。日々のことを綴ります・・・

【DAY7】 なぜフェアトレードなのか?

2013年5月に訪問した際に知り合ったチアパス在住のQグレーダーと

いよいよ来週から、メキシコのコーヒーについて調査と、カッピング研修に入る。その前に、もっとメキシコのコーヒーについて調べてみようと思ってネットの世界をさまよっていると、タイトルにあるような「フェアトレード」の価値を見直すことになった。

きっかけは、2014年のメキシコCOE(カップオブエクセレンス)。第3回目となるメキシコCOEの入賞豆の上位はベラクルース州が上位を独占。続いてオアハカ州。残念ながら、マヤビニックの生産地でもあり、生産量のもっとも多いチアパス州からは入賞ロットはない。
 
 
ではチアパスのコーヒーは終わっているのか?
 
 
もちろん否だ。地形的にも気候の面でも、チアパスはコーヒー生産に非常に利がある。だとすると、COE入賞レベルの水準に達していない他の理由(政治、信条的な問題を含む)があるだろう。今日はその点を議論するものではないので、割愛するがこのあたりも今回の滞在中に解を導きたい。
 
ところで、COEは最高品質のコーヒー豆を栽培することを奨励し、それに対してはきちんと評価し、対価を払いましょう、という画期的なシステムだ。但し、「一定の気概、資源を持った農家」には非常に有効なシステムだということを見落としてはいけない。実は、その段階に達していない生産者がほとんどで、その人たちこそが搾取されている人びとだとすると、COEではコーヒーのトレードが引き起こす負の側面をすべてカバーすることなど到底できない。(COEもすべての問題を解決します、とは決して言っていないはず。)
 
だからCOEと比較して、フェアトレードなんて「終わっている」という議論を翳す人がいるけれど、まったく生産地の事情がわかっていないのだな、ということになる。
 
無論、大多数のコーヒー屋さんは、貧困削減や生産者搾取解消を第一目的に営業しているわけではない。お客さまを一杯のコーヒーで幸せにしたい、と思っている事業者がほとんどだろう(そしてそんなコーヒー屋さんに行くと、心からほっとする。)
 
ただ豆乃木の目的は、お召し上がりいただくお客さまを満たすことと同時に、作り手や、この社会全体が少しずつ豊かになること、と掲げている以上、COEが決してカバーできない大多数のコーヒー生産者層ともっともっとつながりたいし、彼らのコーヒーで、お召し上がりいただくお客さまにもっともっと喜んでいただきたい。そのためにフェアトレードが必要。(言うまでもなく、不出来なコーヒーを買い取ったり、販売したりするのは絶対違う。これは誰にとっても幸福なことではない。だから唯一、カッピングだけは自分の武器にしたいと思って励んでいる。)

頑張っている人を応援するCOEは、「頑張っていない人」(COEが求めるような頑張りをしていない、という意味において。)にはまったく響かない。でも「頑張っていない」とみなされている人が、頑張りたくない人かどうかなんてわからない。頑張るなんて言うと大げさだけど、みんな、自分が作った作物が「おいしかったよ」って言ってもらえたら、すごく嬉しいはずだ。でも誰も伝えてこなかった。頑張ることに「価値」があるなんて、頑張ってきた人しか実は知らない。
同じことで、貧困が連鎖するのは、貧困からの脱し方を誰にも教わる機会がないから。貧困から脱することができるなんて、貧困にあえぐ人たちは、信じていないから。周りもみな貧しいから、貧しくて当然だと・・・。

フェアトレードの基本は人(作り手)と人(買い手)との直接的なやり取り。COEなどの存在さえ知らない多くの生産者は、フェアトレードによってはじめて自分たちの作っているものの「可能性」に気付く。(ただし「組合」という組織とのやり取りでもあるために、ひとりひとりの生産者が「可能性」に気づきにくいというフェアトレードの問題点に関する指摘はまったその通り。だからこそ、組合の「キーパーソン」との折衝が不可欠になる。)

最後になるが、COEの入賞豆は本当に素晴らしいものが多いので、私も積極的に試している。ただ、COE入賞豆をただただ振りかざし、教科書通りのフレーバーを並べるだけのコーヒー屋を、あまり信用していないのは事実。