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【メキシコ滞在記/2017年6月】9回目の「序章」 ~私流 旅の準備

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杉山世子の【メキシコ滞在記】

2017/06/20

【メキシコ滞在記/2017年6月】9回目の「序章」 ~私流 旅の準備

2017年3月20日より28日まではメキシコ滞在記でお楽しみください。

出発の前日に思いついた名案は、本当に名案だったのだろうか。

それは、成田空港まで車を走らせ、周辺のパーキングに1週間余、預けておき、帰国後、その車を走らせて、そのまま浜松まで帰るというプラン。ただでさえ、単身でメキシコへ行ったり来たりしていることを憂いている母親には、この「名案」は伝えない方がよいだろう。身内でなくとも、
「14時間のフライトのあとに5時間の運転だなんて、そんな無茶な・・・」
と周りの人は言う。
でも、振り返ってみて思う。昔々に、たった一度だけ、東京ディズニーランドへ家族で行ったことがあった(あれ以来、両親はディズニーランドのゲートをくぐっていない)。私は当時、小学校1、2年生だっただろうか。

朝の3時に家を出て(ちょうど首都高速に入った頃、オレンジ色した朝陽がビルの合間から射してとてもきれいだった。今でも鮮明に覚えている。)、父の運転で「東京」へと向かい、閉園まですごし、子どもたちはすやすやと車内で眠り、父親の運転で帰って来た。あれから30年以上経った今だって、世の中のお父さん、お母さんは、こうやって逞しく体を張っているのだ。
それを思えば、帰りの14時間のフライトを、自分で操縦するわけではないし、電車に乗っていたって、同じように座ったままなのだから、大丈夫だろう。


成田までは、藤沢からちょうど2時間。空梅雨なのか、運転席で、メキシコへ行く前に日焼けしてしまうのではないかというほどの陽射しを受けながら、聴き逃していたラジオをタイムシフトで聴きながら、喉が乾くほどに大笑いしていたら、あっという間に千葉県に入っていた。

前日に予約した駐車場は、わたしが想像していた通りの「剥き出しの駐車場」で、受付のある建物の前に、車をつけると、係りの人が、
「鍵、わかるところに置いておいてください!」
と威勢よく声を掛けてきた。
「わかるところ」という曖昧な指示で、普段、何気なくドリンクホルダーに鍵を入れている私は、その鍵を取り出して、運転席のシートの上にポンと置いてみた。シートの黒と、黒い鍵が同化してみえたけれど、「座れば違和感でわかるだろうか」とか「とりあえずわからなくてもエンジンはかかるから大丈夫だろうか」とか、束の間、いろいろな想定を巡らせなければならなかった。(指示が曖昧だと、人を少なからず悩ませる。これは教訓にしようと思う。)
駐車場は9日間停めて4950円。藤沢の自宅から最寄り駅まで、タクシー代が往復で4500円くらいすることを思えば、安いような気がした。

航空会社を告げると
「はい、第1ターミナル、北ウイングですね」
と素早く対応をしてもらい、安心する。
そうか、アエロメヒコは北ウイングなのか、と知り、車内で、私はメールフォルダから、「wifiのモバイルルーターの受け取り場所」の案内を探す。

受け取り場所: 第1ターミナル 南ウイング

今回、初めて、旅にwifiモバイルルーターを携行することにした。これさえあれば、(今となっては豆乃木の命綱である)Google翻訳で素早く生産者組合のみんなと対話ができるかもしれない、と思ったのと、出航手配に立合うことができるのであれば、港のあるマンサニージョまで行くことになったとしても、路頭に迷うこともなくなるであろうと、旅のアイテムを増強した。
WEBから申し込む際に、特に深く考えもせずに受け取り場所を「南ウイング」に指定したのは、この私だ。
間もなくして、送迎車は南ウイングに到着。
「あ、すみません。降ります。」
「こちら、南ウイングですよ。」
「あ、はい。でも、なんていうか、はい。ここで大丈夫です。」
「(怪訝そうに)え、そうですか。では、行ってらっしゃい。」
というもごもごしたやり取りを経て、無事に初めてのwifiモバイルルーターを手にした。こちらは9日間で約1万円。元々のプランでは7000円程度だったのだが、
「では、使い方は以上となります。万が一、水濡れや盗難の際には、保障に入っていませんので、実費で弁償となりますが、その際はご対応お願いいたします。」
と、「実費」が意外と高いことと、受付のお姉さんがマニュアル通りのことを、キリリと発したので、ビビってしまった。

「いいか、保険は大事だぞ。」
と、今でもお世話になっている100年続く会社の社長から、創業当時に言われたことを思い出して、慌てて保障をつけることにした。チャリンチャリンチャリン、で1日300円。

私はかつて、この「保険は大事」の社長の言葉で、命拾いした過去があった。
それは今から4~5年前、九州自動車道で、レンタカーを大破させる大事故を起こしたときだった。そのとき、車両保険は任意だったのだが、社長の言葉を思い出して、フルに保障をつけていた。車は台無しにしてしまって、本当に申し訳なく、それなりに心は痛んだものの、私の体とお財布はほとんど痛まなかった。それ以来、「保険は大事」は、私の胸にくっきりと刻まれることとなった。

保険といえば、空港へ向かう車内で、もうひとつしたことは、海外旅行保険への加入手続きだ。
これは、実際に保険を使ったことがないのでなんとも言えないのだが、保障も充実していて、コスパが良さそうだという理由で、前回の旅行からau損保を利用している。アプリから登録できる手軽さも良い。

さらに空港にて両替。週が明けて、また少し円安に傾いたために、両替も最低限。ホテルや移動はクレジットで払えるし、足りなくなったら、メキシコからクレジットカードで現金を引き落とすことにしよう。

さて、ここまで来て、ようやくチェックインカウンターへ向かったのだが、これこそが、最大の不安の種だった。
というのも、一週間前にエクスペディアで購入した航空券は、なぜかその日の出発便に限って、他の日よりも、4、5万円安かったのだ。そのなんとも怪しげな航空券の予約の有効性に確信が持てずにいた。予約の際に、パスポートナンバーさえも問われていないし、eチケットも発券されなかった。(今どきはこういうものなのだろうか)と、これについては、最後まで確信が持てずに、空港まで不安を持ち越していたのだが、こちらも呆気なくチェックイン完了。

飛行機の中は、とても冷えるので、カバンから1枚ジャケットを取り出しておく。

ふ~。

これでようやく心身共にメキシコへ行く準備が整った。
スーツケースを預け、身軽になって思ったことは、そういえば、東京ディズニーランドへ行った頃の父親と、今のわたしはちょうど同じ歳くらいなのだな、ということだった。

人には、いろいろな人生がある。
まさか東京ディズニーランドへと車を走らせていた父親は、自分の娘が、コーヒーの買い付けのために毎年毎年、メキシコの森の中まで行くことになろうとは思ってもみなかっただろう。
ただ、母親の心配をよそに、父親は「気をつけていけよ」以外に、私に何も言わない。

協力隊で、初めてアフリカに住むことになったときも、反対するどころか、「おまえは本当にラッキーだな。」とよくわからない労いをしてくれた。そういうところが、うちの父親らしく、私たちは、やっぱり親子なのだと思う。
母は、結婚した当初、天竜川が氾濫して堤防が決壊したとしても、天竜川の向こう側まで通勤している父親は、きっと泳いででも帰ってくるだろう、と思ったそうだ。そういう生きる力にあふれた人だったようで、わたしにも、きっと父親に似た生命力が漲っているはずだと思う。過信はしない。そうであってほしいだけ。
そんな父親も、来年70になる。さすがにもう天竜川を泳いでは渡れないだろうな。