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【2016-DAY4】 「マヤ先住民のコーヒーを、世界へ」

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News & Columns お知らせ

当社では少量から、フェアトレード及び無農薬栽培された
コーヒー豆を卸売り価格にて販売させていただいております。

杉山世子の【メキシコ滞在記】

2016/03/08

【2016-DAY4】 「マヤ先住民のコーヒーを、世界へ」

2016年3月5日から3月14日までメキシコへ行ってきます!

【2016-DAY4】 「マヤ先住民のコーヒーを、世界へ」

日本輸出用の豆

今回の旅で、はじめて私は先住民の人たちと交流をもったと言えるかもしれない。
「マヤ先住民のコーヒーを、世界へ」
と言って、マヤビニックコーヒーの販売に関わってきたのに、だ。

サンクリストバル滞在2日目に、いつものように集荷場兼加工場のあるアクテアルへ向かうことになった。いつもと違うのは、そこにルイスがいないこと。唯一、英語でコミュニケーションのとれるルイスが、
「僕は一緒に行けないけどね。心配なのは言葉の問題けど、でも大丈夫でしょ!想像以上にfunnyな旅になりそうだね。ふふふ。」
と言って、村に送られた。
9時の待ち合わせに来てくれたのは、パチタンさん。マヤビニックの農家さんとの集荷を含めたやり取りの窓口になっている人物だ。
「ブエノスディアス、セイコ!バモス!!」
彼の明るい笑顔に心から救われる。
途中、会話らしい会話はほとんどない。というかスペイン語が出てこないのだ。だけど、時々
「風が強いね」
「見て、風で屋根が飛ばされてる!」
とか
「この道は新しい?」
「そうだね、3年前に開通したばかりだよ」
などと短い会話が。
アクテアルまでの道のりは1時間半。ふたりきりの車内。でも、私は案外、こういうのが平気なのかも。これから始まる「ルイスのいない滞在」はナーバスと言えばナーバスだけど、何が起こるかわからない分、期待も大きい。

途中、パチタンさんが何かの拍子に、私に年齢を尋ねた。それから、
「子どもは?結婚しているの?」
と。
そうか、私も彼らひとりひとりを知らないように、彼らは私のこともほとんど知らない。私は「一年に一度やってくる日本人のお客さん」というところか。

アクテアルに着くと、掘っ立て小屋の事務所に通される。そこで、マヤビニックのコーヒー部門のキーパーソン、アントニオさんと再会。年々、アントニオさんの笑顔が、増えている気がする。
アントニオさんが今年の状況と価格の根拠、生豆の割り当てを、スペイン語で話してくれているけれど、私はほとんど理解できず。そこから筆談が始まる。大切な話なので、かなり不安なのだが、なんとか通じ合い、合意した。輸出時期なども確認。
「問題ないかい?」
とアントニオさん。
「あとで書面にしてもう一度確認してもらいたいけど、まずは問題ないはず。」
と私。すると、
「お腹減っただろ?」
とパチタンさんが聞くので、私は大きく頷く。

マヤビニック組合のメンバー6名が、近くの町で一番良さそうな食堂に連れていってくれた。
彼らはお互いにツォツィル語で会話をする。スペイン語さえ満足に理解できないのだから、ツォツィル語になればお手上げだ。時々、一同が同時に笑うタイミングがあると、そのときだけ、パチタンさんが
「今は…とこういうことで笑ったんだよ。」
とスペイン語で言ってくれるのだが、それが理解できなくて、こちらも苦笑い。
でも食卓を囲み、皆でトルティージャに手を伸ばす時間を経て、距離も近づいている気がする。仮に私がスペイン語が流暢だったとして、女性であることで、彼らと馴染まないことがあるかもしれない。彼らの生活を見ていると、男性と女性とではまるで役割が違うからだ。

その日は予定していたコーヒー農家さんを訪ねることができなかった。代わりに、コーヒーやマカダミアンナッツの圃場や養蜂プロジェクトを見学させてもらう。
太陽にじりじり照らされつつ、山道を歩きながら、私は外国の空の下が好きだと思った。こうやって現場を歩く瞬間は、気分が最高に高揚する。たとえ言葉が通じなくとも、生産者さんと過ごしている時間や、彼らの生活が垣間見られる瞬間が、何よりもの働き甲斐になっている。そして、それをできるだけ余すことなく、日本で、これを読んでくださっている人がいるのであれば、伝えたい、というのが、私の根底にある思いなのだと思う。

帰りの車は、アントニオさんも加わり3人になった車内。
「明日は、コーヒーの収穫を見せるから」
とパチタンさん。
今回の滞在で、丸々2日間を、先住民の皆さんだけでアテンドしてもらえるとは夢にも思わなかった。
まだこの仕事をはじめて間もない頃、彼らとの隔たりやコミュニケーションの取り方に悩んだ時期があった。そのときに
「10年、20年とかけて、彼らと理解し合えればいいじゃないか!」
と自分を鼓舞した言葉が蘇る。
5年を掛けて、私は確実に彼らに近づいている。それが何よりも嬉しい。

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かつてのブログに書き記してきた滞在記も少しずつ転記しています。
ものの見方やコーヒーに対する視点・考えなども、今からみるとかなり違和感のある文章もありますが、それも含めてお読みください。
http://www.hagukumuhito.net/news/?mode=list&cat=10&&page=3

旅の写真はFacebookにて随時アップする予定です。
https://www.facebook.com/mvcoffee/