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【DAY19】 思いがけない出来事 

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杉山世子のメキシコ滞在記

2014/08/13

【DAY19】 思いがけない出来事

豆乃木杉山は7月26日より2か月間メキシコに滞在します。日々のことを綴ります・・・

【DAY19】 思いがけない出来事

以前に撮影したルイスとアントニオ

【DAY18】マヤビニック組合の「次なる夢」のつづきを19日目に綴っている。
 
雑然としたミーティングルームには、ルイスとふたりのアントニオが揃った。
いつもそうだけど、ルイスが場を取り仕切り、通訳をしてくれる。マヤビニックコーヒーの生命線を握っているアントニオから、何かを尋ねてくることは、ほぼない。
究論だが、私は、先住民の中では大きな体をした彼と話をするために、スペイン語を習っているような気がする。彼の心を開きたい。
 
ところで、ルイスが私に最初に尋ねてきたのは意外なことだった。
「7月30日にマヤビニックの総会に参加してみて、どう感じた?」
(そのときの記事はこちら
と言うのだ。
 
最初に尋ねる質問が、商売はどうだ、とか、来年はどうする、とかではなく、マヤビニック生産者協同組合が一年に一度開催する総会についてのコメントを求めるものだった。それだけ、一年に一度、多くの生産者が集う総会に、価値を置いているということかもしれない。
そしてコメントを求められた総会自体は、とても儀礼的なもので、そこで何かが決議されるようなものでもなかったのだが、きっとあの総会に参加した私が何かを感じたのか、彼らにも(少なくともルイスには)興味があったのだろう。
 
私は率直にこう言った。
「生産者の皆さんにとって、コーヒーはたしかに現金収入を得る手段ではあるけれども、もっと大きな役割があるような気がした。コーヒーに限らず、とうもろこしを育て、養蜂をやって、くだものを植え・・・自然に寄り添い、ありのままを受け容れる生活様式を垣間見ることができた。私は、私たち、消費者の価値観―それは例えば、多品種のコーヒーを味わいたい、とか、違った精製方法にもチャレンジして欲しい、とか―をそのまま押し付けることを躊躇う気持ちが生まれました。」
うまく伝えられたからわからない。何せ、ルイスも私も“英語らしい”言語でやりとりしているのから。
 
私の言葉に、ふたりのアントニオはうなずいていたけど、たぶん、真意までは伝わっていないかもしれない。大丈夫、別に焦る必要はない。
 
「私が心配しているのは、サビ病(コーヒーの病気の一種)のことです。その後いかがですか。」
私が問題の核心をつくと、彼らには、それほど深刻ではない様子で、こう言った。
「6月頃に葉をつけたので、やれやれ、と思っていたが、7月、8月になって実が充分に育っていないということがわかった。例年とはやっぱり状態が異なる。」
「すると、どうなりますか?」
「当然、あと2~3年はサビ病の余波は残る。」
 
私の周りには両親、親戚を含め、農業従事者がいないせいか、私は、誰でも知っているような農業の一般常識さえよくわかっていない、ということがある。生まれ育った町も、地方都市ではあるけれど、まわりに田畑があるような場所ではなかったから、田植えのこともよくわからない。成人して、ひょんなことからアフリカへ行き、マラウイで酪農家や農家さんと付き合うようになり、少しずつ農業の知識を獲得することができたとはいえ。
 
私が進む道(産地と関わり合うという志)において、決して農学博士になる必要はないかもれないけれど、彼らの状況を理解し、判断できる程度の知識の習得は必要だと痛感する。(そしてそれ以上にコーヒー栽培に精通したアドバイザーを知っておく必要がある。)
 
ルイスが言う。
「あなたたちは、私たちのパートナーだ。だから、早めにオファーをくれれば、次の収穫分を用意することは十分に可能だ。但し、オーガニックかトランジションかについては他(アメリカやスイス)との配分があるので、そこは調整が必要になる。」
 
もう一度確認しておく必要があるが、マヤビニック組合が扱う豆は大きくわけて2種類。
 
・Organico(オーガニック)
・Transicion(トランジション)
 
ではトランジションがオーガニックではないのか、と言うとそうではない。オーガニック栽培だ。しかし、認証を受けるためには、一定期間(3年)オーガニックによって栽培されている、と第三者機関の経過観察が伴う。そのため、第一に、組合の新規加入者の豆はオーガニックではなくトランジションという扱いになる。あとは、ルイスの言葉を借りると、「志向の問題」ということになる。農家が「オーガニック」という枠組みを必要とすれば、それを取得するし、組合としても取得できるよう推進している、とのこと。志向の問題と言えば、豆乃木が「フェアトレードラベル」に手が伸びていないのと思じようなものだろうか。
 
2013年にマヤビニックはJASに認定されている。弊社がJAS有機豆としてマヤビニックを扱うことも、環境さえ整えば可能、という段階まで来ている。これについては、お客様の意見を伺いながら、進めていきたいと思う。

でも正直、私にとっては、この稀有な自然環境の中、豊かな土壌で、私たちとまるで風習や文化が異なるマヤ先住民である“あなたたち”が作っているコーヒーが欲しい、というだけのような気もする。有機JASで、品種が豊富で、標高がどれだけで…という豆は探そうと思えば、それこそ手に入れることはできるのだから。
 
次の収穫に向けて、組合では組合員を対象にした調査票を準備している。それはかなり詳細な調査票だ。昨年の収穫量や品種はもちろん、たとえば、シェードツリーの種類は何か、とかいう質問まである。
「まとまったら、ぜひ見せてください。」
と私は言って、彼らは快諾してくれたものの、果たして、この調査票をどのように活用できるだろうか。
 
不意打ちだったのは、その後である。帰り際に、アントニオが2014年豆のサンプルを出してきてこう言った。
「そうそう、実は見込みが違って、実は少し余っている。興味があれば。」
なんと、喉から手が出るほどに欲しかった豆が、実は余っていたなんて。彼らの大らかさも見事だが、私の経営者としての詰めの甘さに呆れるばかり。やっぱりコミュニケーションが足りなすぎる。本来ならば小躍りをしたいところだが、がっくしと肩を落としてしまった。自分が情けない・・・。
 
「わかりました。いずれにしても、フェルミン(カフェテリアの焙煎士)に焼いてもらうことにします。」
 
混乱する私は、なんとか冷静に対応し、金曜日、再び事務所を訪れることを約束してその場を去った。バッグには思いがけず2014年豆のサンプルが入っていて、それが私の判断にゆだねられている。


金曜日にこの部屋でカッピングする予定。どうなることやら・・・