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豆乃木がなる日 Story of mamenoki 起業後6年

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豆乃木がなる日 Story of mamenoki 起業後6年
2017年10月17日。マヤビニックコーヒーを日本のロースターさんに紹介してくれた恩人でもあるグラウベルコーヒー、狩野さんと、グラウベルコーヒーのproducerでもある藤原さんが、トークイベントを企画してくださった。<対談>であったはずなのに、私が一方的に喋りすぎてしまい、3日経った今でも反省している。
事前にいただいた質問票の、ほとんどは、お話できなかった。狩野さんに、もっとえぐってもらうつもりだったのに。そして狩野さんに、もっと「発見してもらう」つもりだったのだ。

いただいた質問事項を、勝手に振り返りつつ、トークイベントの反省会をしよう。6年前の10月20日に生まれた豆乃木は、また新しい一年を迎えようとしている。


なぜメキシコのコーヒーと関わることになったのか

ドラマティックな出逢いであれば良かったのに。
そう思わずにはいられないのだが、実際のところ、「たまたま」としか言いようがない。学生時代に、関わっていたプロジェクトで、メキシコのコーヒーとの出合いがあった。アフリカや日本の地方の地域おこしをテーマにしていた私は、ほんの傍観者にすぎず、いつまでも外野席からプロジェクトを眺めていた。
ある日、第一線で活躍していたプロジェクトマネージャーが、同プロジェクトから退くことになった。そこで私の打席が回ってきた。なぜ私だったのかと言えば、私が単に年をとっていたからではないかと思う(私は、28歳のときに大学に入学した。)
その後、私は少しずつ打席に立つことになるのだけれど、スペイン語が操れない私は、見逃し三振ばかりで、進塁できず。スタメンに選ばれたのは、単なる人数合わせだったのだと思う。

卒業が迫ってくると、私はいよいよ本格的に起業に向けて準備をはじめた。あるビジネスプランを描いて、起業のためのセミナーに通い始めた。そのビジネスプランには、「コーヒーの販売」についても、かろうじて触れていたかもしれないが、そんな程度でしかなかった。ただ、常々思っていた。
「何かやりたい」
「世界とつながる仕事がしたい」
「そのときには<支援者>という立場を脱却したい」
「対等な(ビジネス上の)パートナーになりたい」
1年近くの歳月をかけて、自分自身を棚卸したときに、関わっている「フェアトレードコーヒープロジェクト」の存在を強く実感することになる。今、つながっている人たちに、まずは向き合おう。

メキシコの大地を踏んだのは、そのあとだった。
それから6年間の間に訪問した回数は、今年になって、二けたになった。それなのに、未だにメキシコに対しては、どこか他人行儀な、「お邪魔します」という感覚がある。言葉の問題は依然大きいし、数年間関わっていたアフリカへの思いも捨てていない。(私は結構思い出に執着するタイプなんだと思う。)
でもだからこそ、常に客観的で、対等でいられるのだろう。一年一年、良い関係を築けているのではないだろうか。


「フェアトレード」がしたいわけではない、の真相は?

以前、ブログで、 「フェアトレード」がしたいわけではない、という記事を書いたことがあった。
(記事のURL:http://www.hagukumuhito.net/news/?mode=detail&article=447
この記事に書いていあるとおりで、「人は皆、尊い。だから、他者に対して(それが見ず知らずに人であっても)思いやりの気持ちを持ちたい」という気持ちは一貫して変わらない。フェアトレードという仕組みやスローガンに共感しているのではなく、思いやり、に重きをおきたい。フェアトレードだから買うのではなく、その人たちが心をこめて作ったものにお金を払いたいだけだ。
(だからこそ、私は今、フェアトレードのパートナーであるマヤビニックとセスマッチに対して、「改善要望書」をあげている。「フェア」でいるために必要なことだと思うから。)というわけで、「フェアトレード」をしたくって豆乃木を作ったわけではないけれど、私の個人的な「体験」が、フェアトレードをする必然性を与えてくれている、という気持ちは変わらない。

実際に買い付けに行く意味

「実際に買い付けに行く意味」を考えたことがなかった。行きたいから行くし、事情が許すなら、一年の半分は産地で過ごしたいほどだ。産地にいるときが、一番、高揚感がある。

2016年の6月だったか、神戸にあるUCCのコーヒーミュージアムに行った。贅沢な展示の数々の中でも、「産地の展示ゾーン」に入ったときに、一番血がたぎるのを感じた。そのときに、私は産地(畑)にいる時間が一番楽しいし、そのためにも、今の取り組みを続けていきたい、と思ったほどだ。
青年海外協力隊でマラウイにいたときにも、東西南北、ピックアップ(4輪駆動車)に乗せてもらい、よく走っていた。事務所にじっとしていられないから、とにかくコミュニティを回った。ずっと変わらない車窓の景色を眺めているのも好きだった。産地に行くと、そのときと同じ気持ちになれる。「ただいま」っていう感覚。

具体的に何をやっているの?

具体的に何をやっているかと言うと、毎年それほど長期滞在ができないので、フィールドでは、ひとまず毎年、こちらが見たいことを伝えて、見せてもらう。いくつかの農園、農家さんの実際の住まい、収穫風景、果肉除去の工程、精製や選別・・・。さらに事務所では、組合の状態をヒアリングして、価格とだいたいの輸入数量を決める。出港時期もこのとき、調整する。価格は、まずは相手に提示してもらい、「根拠」を聞く。こちらの希望も伝える。例えば、荷姿であったり、支払いのタイミングであったり。
さらにカッピングをしてコメントを言い合う。セスマッチでは必ずカッピングを実施している。マヤビニックでは、そのときどきで状況が異なるが、来年からは、滞在日数を長くとって、カッピングを徹底して実施してもらわなければ。

2017年ははじめて出航前の選別に立ち合った。それは正しく選別が行われているかの確認と、コンテナへの積み込みに関する指示のため。細かいことだけれど、非常に重要だと感じている。というのは2016年に結露によって30袋に、麻袋の表面に、水濡れのシミを確認していた。ただ、そのときは、その年はじめて導入したグレインプロのおかげて、豆への浸水を防ぐことができた。実は、グレインプロに関しては2012年ごろから、装着をお願いしていたのだが、その年ようやく採用されたのだった。そうやって、ひとつひとつやっていくしかない。

あと、もうひとつは、日本側の評価を伝えることも忘れていない。セスマッチはとても熱心に耳を傾けてくれる。マヤビニックは単純に、喜んでくれる。
来年やりたいことは、もう一度、選別作業に1から立ち合うこと。前回は全量立ち合うことができなかったので。全量立会い、必要であれば2~3度選別機にかけてもらうことも要求したい。

現地とのやりとりで気を付けていることは?

もっとも気をつけていることは、相手のペースや考えを尊重しながら、こちらの要望を伝える、というバランス。もし、私が毎年数コンテナ買い付けできるのであれば、もっとリクエストをして、リクエストを通してもらうこともできるかもしれない。その、たくさん買う人が「これで良い」と言っていたら、産地の品質に対する考え方は変わらない。こちらがハードワークして、たくさん買えるようになったら、こちらの声(リクエスト)は無視できなくなる。その状態に持っていくまでは、バランスをとりながら、現段階でできる最善策をとっていく。

なぜ、そこまでして、マヤビニックのコーヒーを買い付けるのか?

出逢ってしまったから。この世界にはたくさんのコーヒー産地があり、たくさんの農園があるのに、わたしはこのコーヒーと最初に出会ってしまった。世の中に美味しいコーヒーはたくさんあるし、マヤビニックが1番、とは思っていない。もちろん、きちんとハンドピックしたときは、劇的においしく感じるから、そういう努力は惜しんではいけないのだろうけど。

こんなにも生々しく、人びとにとって身近なコーヒーがあるだろうか、と思ってもらえるコーヒーが、マヤビニックであって欲しい。だから、マヤビニックはコーヒーであって、コーヒーではない。一冊の写真集であり、エッセイのような、そしておいしい、そんなコーヒーメディアをつくりたい。そして、そんな風に感じられるコーヒーをもっと増やしたい。つまり、産地を増やしたい。いろいろな生産者と関わっていきたい。

セスマッチに期待すること

セスマッチの豆は2015年から取引をはじめて、今年で3期目。昨年は、うちでは抱えきれなかったので、他の会社に紹介して、デカフェになって日本へ入ってきた。そして、今年の購入に繋げることができた。マヤビニックとは、産地とともに、豆乃木自体も共に成長していく、というつもりでいるが、セスマッチに関しては、もう少しドライに「品質主義」で付き合っていければと思っている。あくまでスローガンだけれど、「一番おいしく、安心できるオーガニックコーヒー」になって欲しい。彼らはCOEの入賞を目指しているので、こちらの要望は的外れではないはずだ。
彼らにはプレッシャーをかけられるように、こちらも「やる気」を見せないといけない。要求するだけではダメだということは、マヤビニックですでに学んでいるからだ。
だから、今は「品質主義」に徹するための前段階で、「信頼関係をつくる」時間。何よりも、買い続けることで、信頼関係を作っていくしかない。
彼らは自らが品質向上の価値を理解しているので、わたしの役割としては、欲しいものを、買える状態を作ることだ。一番いいコーヒーは、日本に出そう、と思ってもらえる相手になること。買う力だけではなく、誠意は伝わる。

品質向上の希望はあるか?

それは豆乃木次第かもしれない。実感としては、一年ずつ、対応は良くなってきている。例えば、今年は品質には残念ながら反映されているとは言えないが、コンテナへの積み込みの際に指示した通り、カバーを覆って、結露を防ぎ、さらに直置きをしないよう、パレットの上に豆を置いて欲しい、という、要望が叶っていたり。これによって、輸送中の「品質の劣化」を防げたかもしれない。小さいことだが、そうやってひとつひとつを改善していくこと。
そのほかには、彼らが良いコーヒーを作ることで、高揚感をえられるような、そんな買い付けがてきたら良い。彼らにとって、コーヒーの売買が単なる収入で終わらない、もっと得られるものがある、と感じてもらう工夫を考えていきたい。すごく単純な発想だけど、来年は、ロースターさんや店舗の写真、メッセージ、お客さんの声を集めて、写真集でも作って持っていこうと思う。映像なんかもあっても良いだろうなぁ。

「豆乃木の5年後」課題と展望は?

今朝、一枚の紙を取り出して、未来予想図を描いてみた。これが想像をはるかに超えて、イメージが広がっていった。そして思ったことは、「これはひとりでは成しえない」という当たり前のこと。個人的な思いとしても、もっともっと産地で過ごす時間をとりたいから、国内の業務をしっかりお任せできる体制を作りたい。人が必要だ。これまでは無我夢中で、完全に私の思い込みでやってきたけれど、これからは、一緒に地図を描いてゆける仲間を募ってやっていきたい。
豆乃木の7年目の使命は、「おいしいだけじゃないフェアトレードコーヒー」という選択肢をもっと増やすこと。おいしいだけのコーヒーは、もっと得意な人にお任せして、ドラマティックなコーヒーを、産地との交流によって届けている、そんな5年でありたい。